第5回総会(平成16年4月22日開催)講演摘録
「住民と企業参加による高度集積地区のまちづくり」
講師:富野 暉一郎先生 (龍谷大学 地域人材・公共政策開発システム・オープン・リサーチ・センター長)
1.地域の発展に関する最近の動向
- 個々が力を発揮し、力を結び合わせて、地域自らの発展を獲得していくかを考えていく時代となっている。
- 世界の社会開発のトレンドは、経済成長路線から持続的発展への転換へと向かっており、資源のアンバランスや市場の混乱を招くことなく、安定的な成長・発展を進めていくかという視点が重要となっている。
- 持続的発展を考える上で、「環境」は大きな要素であるが、それだけでは地域の力がみなぎる成長、発展はありえない。従来の「環境」だけでなく、「拡張的な持続的発展」として「経済」「社会」を合わせた3要素が必要とされている。
環境的持続性 : 生活の基盤となる健康でやすらぎのある環境の持続
経済的持続性 : 雇用・収入が確保されることによる安定的なお金の流れ
社会的持続性 : 個々の能力を発揮しつつ、お互いに連帯していくことによる安定した社会の形成
2.地域の発展に関する最近の動向
- 高度集積地区のまちづくりについて、「拡張された持続的発展」の3要素の概念を地域の現状に照らし合わせて、課題を整理する。
<地域の課題>
・環境
緑地等が豊富でありながら、十分に活用されておらず、潤いを与える空間になっていない
→課題解決に向けて(例)
質の高い住環境づくり、立地企業と地元の協力による緑ある環境づくり
・経済
地元企業や地元商店街における活力の低下、企業誘致だけでは地域への経済効果が少ない
→課題解決に向けて(例)
地元の人材や大学、NPO等による地域の新しいビジネスを生み出す環境づくり
・社会
旧住民、新住民、地元企業通勤者の3つの層に分かれ、それぞれの交流が不足
→課題解決に向けて(例)
地域へのアイデンティティの明確化等、各層がつながっていくための仕組みづくり
- 企業、住民、大学等が知恵を出し合って、どのような仕事を生み出し、どのような人間関係をつくり、自分たちの生活にどのように結びつけていくかをみんなで考えていくべきである。
- 行政としては、個々がそういうことをしやすいような環境整備、それを奨励するための予算、コーディネーターを用意し、人のつながりをつくっていくことに重点を置くことが求められる。